安岡正篤一日一言

三不幸/安岡正篤一日一言1026

伊川(いせん)先生言う、人、三不幸あり。
少年にして高科に登る、一不幸なり。
父兄の勢に席(よ)って美官となる、二不幸なり。
高才有って文章を能(よ)くす、三不幸なり。
(「伊川文集』)
年の若いのにどんどん上へあがる。
世の中はこんなものだと思ったら大間違いである。
というのは修練というものを欠いてしまうことになるからで、これは不幸である。
これは官ばかりではない。
親のお陰で若輩(じゃくはい)が重役になったりする、みな同じことである。
またいろいろのすぐれた才能があって、文章を能くする、
--文は飾る、表わすということで、つまり弁が立ったり、文才があったりして表現が上手なこと--
これも大きな不幸である。
今日は選手万能の時代で野球とか、歌舞とか、若くてできる者にわいわい騒ぐ。
これは当人にとって、大きな不幸であります。
若くてちょっと小説を二つ三つ書くと、たちまち流行作家になって大威張りする。
小娘がちょっと歌や踊りができると、やれテレビだ映画だ、と引っ張り出して誇大に宣伝する。
つまらない雑誌や新聞がそれをまたデカデカと報道する。
変態現象と言うか、実に面妖(めんよう)なことで、決して喜ばしい現象ではない。

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