実践なくして人生の好転はない

倫理法人会の活動指針を示した「憲章」には、「実行によって直ちに正しさが証明できる純粋倫理を基底に、経営者の自己革新をはかり、心の経営をめざす人々のネットワークを拡げ、共尊共生の精神に則った健全な繁栄を実現し、地域社会の発展と美しい世界づくりに貢献することを目的とした団体である」と明記されています。
倫理法人会は、この憲章の精神が示すとおりに活動を展開していていくことが眼目です。特に純粋倫理の実践によって心の持ちようが変わり、今までと違った生活がひらけてくることを「体験」と称しています。この倫理実践による心境および環境の変化が、経営にも大きな影響を及ぼします。変えるべきは外の世界でなく、自己の内面をより幸福なほうへと変えていくことがポイントです。
 千葉県の女性経営者のA子さんは、美容関係の仕事をしています。三十代で結婚をしたのですが、理想の夫だと思っていた人間が、実は酔うと暴力を振るう人間だったのです。その暴力は日増しに激しくなっていきました。
何度も別れようとしましたが、そのつど〈私がいなければ彼はまっすぐに生きていけない〉と思い、別れられずにいました。やがて、子どもが八歳になったとき、夫はとうとう子供にまで手を上げるようになりました。妻の知らないところで隠れて暴力を振るっていたのです。子供の体にあざが頻繁にできており、それが夫の仕業とわかった時、A子さんは離婚を決意しました。
 別れてからは収入面で苦労はしましたが、しばらくは安心感のある生活でした。しかし、やがて子供は、自分の中に流れる血液の半分に父親の血が流れていることを嫌がるようになったのです。
どうすることもできない悩みをモーニングセミナーの講師に打ち明け、倫理指導をお願いしてアドバイスを受けました。その際、「あなたが別れた夫を恨むことは仕方ない。しかしその思いが我が子に反映して、幼い子供が自分を嫌い苦しんでいる」と指摘を受けました。
そして「別れた夫に感謝できなくとも、尊い命を授けてくれた夫の御先祖様には感謝できるでしょう。夫だって暴力を振るう人間になりたくてなったのではない。まずはお墓に行って感謝できるところから始めてください」とアドバイスを受けたのです。
思い当たるところがあり、Aさんは別れた夫の先祖のお墓を掃除し、墓前で我が子の命を授けてくれたことに深く感謝をすることを続けました。
親子はひとつながりです。母親の気持ちは子供にすぐに伝わります。やがてA子さんの子供は、自分の父親を肯定的に受け入れるように変わっていき、心が落ち着いていったのです。それと同時に、A子さんの仕事ぶりにも変化が起き、心が和むとの評判からお客様も増えていったのです。併せて従業員のチームワークも良くなりました。
経営者の心が変わった時、仕事も家庭も変わっていったのです。人を変えるのでなく、まず自分が一歩成長することで苦難は去っていきます。そこには自分だけにしかできない人生の使命が隠されているはずです。
頭でっかちに相手の批判ばかりしていても、何も変わりません。純粋倫理を学んでも、実践しなければ何も変わらないのです。