『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

7月30日 「自ら昭々にして」

自ら昭々にして、人を昭々ならしむるは賢者にて、必ず其の功を見るなり。自ら昏々にして、人をして昭々ならしむるは不肖にて、必ず其の功を見ず。(中略)人君官
吏、豪奢を好み安逸に耽り、天下へ質素倹約、文武興隆の令を降す如き、古より未だ曾て行はるるものあらず。近人の文中に「主人晏く起くれば家僮門を掃はず、騎者胆
壮なれば馬余勇あり」の語あり。余以て名言とす。 安政3年6月7日「講孟劄記」

【訳】

自分自身が明らかな人徳をもっていて、人を導き、徳を明らかにさせようとする人は心ある立派な人であり、それは必ず成功する。自分自身が道理に暗く愚かな人物であ
りながら、その徳を明らかにさせようとする人は愚人であり、それは必ず失敗する。(中略)君主や役人が、贅沢を好み、何もしないで遊び暮しながら、天下の人々に質
素倹約、文武の興隆を命令しても、昔からそのようなことが実行されたためしはない。近頃の人の文章に、「主人が遅く起きるなら、召使いは門前を掃除しな
い。馬の乗り手の意気が盛んであれば、馬も元気が溢れてくる」という言葉がある。私はこれをすばらしい言葉だと思っている。