『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―

1月29日 「武士たる者は」 

敬は乃ち備なり。武士道には是れを覚悟と云ふ。
論語に「門を出でては大賓を見るが如し」と云ふ。是れ敬を説くなり。
※呉子に「門を出づるより敵を見るが如くす」と云ふ。是れ備を説くなり。
竝びに皆覚悟の道なり。敬・備は怠の反対にて、怠は即ち油断なり。
武士たる者は行住坐臥常に覚悟ありて油断なき如くすべしとなり。  
安政3年8月以降「武教全書講録」

【訳】

敬うとは備えることである。武士道ではこれを覚悟という。
『論語』に、「わが家の門を出て他人に接する時には、高貴の客人を見る時のように敬しみなさい」という。
これが敬を説いている。『呉子』に、「門を出た時から、敵を見るようにしなさい」という。これは備えを説いている。
共に、覚悟のあり方である。敬うことと備えることは怠るということの反対であり、怠るとは、つまり油断である。
武士というものは、日常の起居動作において、常に覚悟をし、油断のないようにすべきである、ということである。

※中国の春秋戦国時代に著されたとされる兵法書。『孫子』と並び称される。
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論語と呉子の違い。自分は論語を尊重します。