『万人幸福の栞』を学び苦難を前向きに捉える

倫理法人会では「純粋倫理」を中心に、倫理に基づいた経営のあり方、倫理に基づいた経営者としてのあり方を学んでいます。
 特に、テキストとして使用している『万人幸福の栞』には、古今東西の偉人・賢人が肌で感じてきた「人間関係をよりよくしていくためのエッセンス」が凝縮されており、人間力を高める上でのものの見方・考え方が理解できる名著として、60年以上にわたり会友に読まれています。
 経営者のA女史は、自身の歩んできた人生観と倫理法人会の学びが同じであることを知り、入会した一人です。A女史は病弱な両親のもとで産声を上げました。両親が病弱のため家庭は貧しく、収入もないため、小さい頃より親戚や近所の家に行っては家事育児を手伝うことで小遣いを稼ぎ、夜は内職をして献身的に家族を支えてきました。
 一般家庭の子供であれば、祝祭日や春夏冬の休みなどは家族で旅行に出かけたり友達と遊んだりするのですが、A女史は高校三年生まで一度も家族で旅行に出かけることも友達と遊ぶこともありませんでした。A女史にとって休日というのは、「働いて生活費を稼ぐ日」であったからです。
 その後、A女史は高校を卒業し、地元の企業へ就職をして結婚をしましたが、第一子の長男が血液の癌に冒されていることを医師から宣告されたのです。しかし、A女史は悲嘆にくれることなく、長男が少しでも元気になるよう、高額の医療費を払いながら必死に働き続けました。
 その後、長男は小学生に上がりましたが、治療のため学校に行けないことも度々ありました。学校に出たとしても他の子と同じような生活はできません。そのため周囲からいじめの対象となり、泣いて家に帰ってくることが増えてきました。
ある日、A女史はいじめっ子の家に行き、母親に会って長男の病気のことを説明していじめをしないよう願い出たところ、「障害のある子供を生んだお前が悪いんだ」と一蹴されたといいます。普通であれば、相手の一言に激昂するのでしょうが、A女史は「そうだな、体の弱い子を生んだ私が悪いんだ」と思い、「この子を人並みの生活ができる強い子供に育てよう」と決心したといいます。 
長男は母親の深い愛に育まれ、現在は東京でタクシーの運転手として働きながら元気に暮らしています。
「いじめっ子の母親の一言があったおかげで今の人生があるので、本当に感謝しています」と語るA女史。苦難を前向きに捉えて受け入れる姿勢は、まさに倫理法人会で学ぶ「苦難は幸福の門」の典型的な考え方といえるでしょう。
 私たちは『万人幸福の栞』というテキストを通じて、人生をより豊かにより幸せに生きるためのものの見方や考え方を学んでいます。A女史のように、すべての出来事を前向きに受け入れることは難しいかもしれませんが、少しずつものの見方や考え方を修正して、「生きていてよかった」と思える人生を送りたいものです。