物の整理は心の整理

目課や決まった手順を意味する言葉に、「ルーティン」があります。
昨年のラグビーワールドカップで活躍した五郎丸歩選手の一連の動作は、
キックの精度を高めるために生み出されたルーティンです。重要な局面において、
力を発揮できるように心を整える、五郎丸選手オリジナルの精神統一法といえるでしょう。
ある経営者の体験談です。Sさんは、几帳面で大のきれい好きです。
道端にタバコの吸殻や空き缶が落ちていると、拾って、会社まで持ち帰ることが習慣に
なっていました。
職場でも常に清掃や整理整頓を心がけています。特に意識したのは、共有の場ではトイレ、
洗面所などの水周り、身近なところではパソコン、デスクの引き出し、かばん、
ゴミ箱の中でした。Sさんにとって、清掃や整理整頓は、次の仕事に向けて、
心を整えるルーティンだったのです。
一昨年の夏頃から、Sさんの会社は業績が上向き始めました。忙しさが増す一方、
Sさんは仕事を部下に任せることができず、自分の力を頼りに仕事を抱え込むようになりました。これまでの習慣だった整理整頓をする余裕もなく、Sさんの周辺には、
次第に不要なものが溜まってきたのでした。
その頃から、職場や家庭で異変が起き始めたのです。自社製品へのクレーム、社員の交通事故、
子供の不登校……。立て続けにやってくるトラブルの対処にとても困ったSさんは、初
めて倫理指導を受けました。
事情を話すと、「忙しさを理由に、これまで大切にしていたことを疎かにしていませんか。
また、周りを信じず、自分の力ですべてを解決しようとしていませんか」と問われたのです。
Sさんはハッとしました。これまで行なってきた清掃や整理整頓は、忙しくなると、
いとも簡単に止めてしまうような、上辺だけの実践であったこと、そして〈今がチャンス〉
とばかりに仕事を抱え込み、部下に任せられなかったことは図星だったからです。
ルーティンはむしろ、忙しく、心に余裕がない時ほど必要だったのです。この日を境に、
Sさんは、仕事を溜め込まず、部下を信じて任せることを心に決めました。また、日に一度は、
清掃や整理整頓することを決意しました。
「決心したその時から、肩の力が抜け、何か憑きモノが取れたような感じがします。
無理やり背伸びをしていた自分とサヨナラすることができました」と、Sさんは後に語っています。
Sさんが心と行動の実践を始めて三カ月、社内には以前の清々しい雰囲気が戻ってきました。
そして、職場や家庭での問題事が目に見えてなくなってきたのでした。
物の整理は心の整理といわれます。また、清掃や整理整頓は、
次のスタートを気持ちよく切るきっかけにもなります。
どのような局面でも百パーセントの力を発揮できるよう、物を整えることから、
自分の心の整理にもつなげていきたいものです。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

12月13日 「自分をチェンジするんやで」

幸之助は、私が松下電送の社長時代に、「木野君な、
経営理念に祈って祈って、人ではなく自分をチェンジ
するんやで。チェンジするのは自分の生命や」と、よく
言いきかせてくれました。

自分の生命をチェンジするとは、考え方をチェンジす
ろという意味でした。
そうして、宇宙根源の法則に乗って、勝手に道が開け
てくるのです。今思うと、幸之助は短い言葉で、深い深
い生き方の極意を伝えてくれていたのです。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

12月12日 「変わったことはないか」

会社を取り巻く環境は目まぐるしく変わっています。
よく会社に行くと、挨拶代わりに「変わったことないか」
と聞きます。幸之助は真剣に変化に対して質問をしていました。
しかし、よくよくその態度を観察していますと、変化を先取りする
姿勢が大事だと言うことに気づかされました。
変化を知った時は遅れているのです。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

12月11日 「夢は自らつくる」

幸之助の信条は、自分の力でものごとを決めることでした。
よく「経済と経営は違う」と言っていましたが、経済に影響を
受けるのは、人頼りの経営だと考えていたようです。
よく先延ばしをする経営者がいます。来年の景気が良くなるから、
来年に延ばそうというような考えです。
すると決まって幸之助は、「その考えが甘いんや!自分の夢は
自ら創るもんや。人を頼りにしたらあかん」と厳しく注意して
いました。