『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

6月20日 「君子小人並びに服するの人②」

 

徳行の士は「居処恭しく事を執りて敬し、人と忠なるは夷狄に之くと雖も棄つべからざるなり」<(論語)子路>「言忠信、行篤敬ならば、蛮貊の邦と雖も行はれ
ん」<(論語)衛霊公>の類にて、斯くの如き者は君子小人並びに服するの人なり。  安政3年6月7日「講孟劄記」

【訳】

二つめは、徳行の人、つまり、道徳にかなった人物であり、「日頃の生活態度はうやうやしく、仕事に際しては心をそのことに専らにし、敬い謹んで、怠らず、ゆるがせ
にしない。また、人と交際する時には忠誠を尽くして、斯き偽らない。この三つは、夷狄のような、礼儀道徳の低い所へ行っても、すてて、これを失ってはいけな
い」<(論語)子路>とか、「言葉が誠実で正直であり、行いが人情に厚くつつしみ深ければ、言行共に誠があるので、自然に人を感動させて、(中国はいうまでもな
く)どんな未開の土地に行っても行われることであろう」<(論語)衛霊公>という類である。このような人物に対しては、君子も小人もともに敬服するものである。

朝の清掃は気づきの宝庫

人は誰でも、平等に二十四時
間という時間を与えられています。この時間を、どのように使おうが自由です。
 しかし、時間の使い方は、仕事に、人生に、大きな影響を及ぼします。
ビルメンテナンス業を営むY社長は、始業時間よりかなり早く出社し、社内外の清掃を行なうのが日課です。特に、自社前の公道の清掃は念入りに行ないます。
「朝は絶好のシンキングタイム(思考時間)です。早朝、時間を決めて清掃していると、いろいろなことに気づきます」と語るように、これまでも朝の清掃中、多くの気づきがあったそうです。
たとえばある年の夏、公道のプラタナスの木の皮が剥げ落ちているのを見て、〈植物も暑くなると、人間と同じように衣服を薄くしたり、脱いだりするんだな。わが社にも、余分な出費があるのではないか〉と思い、帳簿を整理してみました。すると、不要な出費があることがわかり、改善して、必要
経費の削減に成功したのです。
建設業を営むI社長も、Y社長同様、朝の清掃を欠かしません。社員や職人さんが来る前に出勤し、事務所内と、資材置場のトイレを清掃しています。
ある日のことです。資材置場のトイレを掃除しようと、扉を開いた途端、鼻を突くような異臭がありました。トイレの床には嘔吐の後があったのです。
〈こんな所に吐いたのは誰だ〉と一瞬思いましたが、〈待てよ、昨日は上棟式に現場監督が出向いて行ったな〉と、昨晩のことを思い出したのです。
自社近くの現場で行なわれた上棟式には、当初I社長が出る予定でした。ところが急用が入り、急遽、現場監督が社長の代理として参加したのです。
上棟式では、お祝いとして、宴席が設けられることがあります。現場監督は、お酒が飲めない体質でした。おそらく大切なお客様からお酒を勧められて、断ることができなかったのでしょう。会社まで帰りつき、トイレに駆け込んだものの、我慢できずに嘔吐してしまったのかもしれません。
〈会社のために、飲めない酒を無理して飲ませて本当にすまなかった〉と思うと同時に、I社長は、両手で、その汚物を処理しました。社員や職人のお陰で、会社が成り立っていることを体で感じ、感謝の念がさらに深まった、と後に述懐しています。
朝を制する者は人生を制する。
一日を制する者は一年を制する。一年を制する者は一生を制する。
という言葉があります。「朝活」という言葉がブームになりましたが、誰でも等しく与えられている二十四時間の中でも、とりわけ朝の活用が、大きな影響力を持つものです。掃除に限らず、一日のスタートである早朝を有効に使うことで、仕事に、人生に大きな喜びを得ることができるでしょう。
「先んずれば人を制す。先手は勝つ手。早い出発、これは成功の第一条件である」(丸山敏雄著『自分経営の心得』より)。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

6月20日 「賢い人間は国を滅ぼし、
会社をつぶす」

「賢い人間は、国を滅ぼし、会社をつぶす」と
幸之助から言われました。

賢い人間は、理論で武装します。

理屈が先では、人は動きません。

偉い人とは、どれだけ苦難や、障害を、乗り切って
きたかで決まるのです。

感性が動いた時、感動が生まれるのです。

幸之助は何に対しても感動する、素直な心を
持っていました。

『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

「千古一道」 

四目を明にし、四聡を達すとは、古聖の明訓なり。而して其の道二あり。天下の賢能に交はり、天下の書籍を読むに過ぎず。(中略)有志の君、千古一道、要は目を明にし聡を達するに帰すると、ひそかに感嘆し奉る所なり。  嘉永6年8月「将及私言」

【訳】

広く四方の事物を見聞し、広く四方の万民の意見を聞いて、君主の耳に意見が入るのをさまたげることのないようにせよ、とは昔の聖人の立派な教えである。そして、そこに至る方法は二つある。広く賢者と交際すること、そして、広く読書をすることである。(中略)志のある君主たる道、それはいつの世にも一つであり、不変である。要点は見聞を広め、人々の意見を聞くことである、と。人知れず、感心し褒めたたえています。

『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

「尽く書を信ぜば」 

孟子言へるあり、曰く「尽く書を信ぜば則ち書なきに如かず」と。  弘化4年9月晦日「平内府論」

【訳】

孟子が次のようにいっている。「書(『書経』のこと)の内容をことごとく信じるならば、却って(人としての道をそこなうこととなるので)書かない方がましである」と。