『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

「自ら四時あり①」 

吾れ行年三十、一事成ることなくして死して禾稼の未だ秀でず実らざるに似たれば惜しむべきに似たり。然れども義卿の身を以て云へば、是れ亦秀実の時なり、何ぞ必ずしも哀しまん。何となれば人寿は定りなし、禾稼の必ず四時を経る如きに非ず。

【訳】

私は今三十歳で人生を終わろうとしている。いまだ、一つとして物事を成し遂げることなく死ぬのであれば、これまで育ててきた穀物が成熟しなかったことに似ているので、惜しむべきかもしれない。しかし、私自身の人生からいえば、稲の穂が成熟して、実りを迎えた時なのである。どうして悲しむことなどあろうか。ありはしない。なぜなら、人の寿命はこうだという決まったことはない。つまり、穀物が必ず四季を迎えて成熟するようなものではない。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

6月19日 「可能性に限界はないのです」

まだまだ良い方法がありはしないかと、考えれば
考えるほど、必ず新しい工夫が生まれ進歩が
生ずる。これは幸之助の日常生活の姿です。

考えて、考えて、考え抜くところに、新しい道が
開かれてくるのです。

経営理念に祈り抜くことが、なによりも大事
なのです。

可能性に限界はありません。

『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版

『吉田松陰一日一言』

―魂を鼓舞する感奮語録―

6月19日 「君子小人並びに服するの人①」

 

君子に二等あり。高尚の士は固より流俗に同じうせず、汙世に合せず、嘐々然として古人を以て師とす。此の人の世に居る、俗人庸夫其の奇怪に駭き、口を交へて唾罵す
るは固よりなり。而して独り有識の士のみ深く是れを推服す。

【訳】

心ある立派な人に二種類ある。その一つは高尚の人、つまり、学問・言行などの程度が高く、世俗を超越した気高い人物である。このような人はくだらない世間に同調せ
ず、濁世に合わせず、志を大きくもって、昔の心ある人物を師としている。このような人物がいると、俗人や凡庸な人物は、その、常識では考えられない言動に驚き、そ
ろって非難することは、いうまでもない。しかし、学問があり見識の高い人物のみは、このような人物を、心から偉い人として推し、心服するのである。

 

人の喜びをわが喜びに

ある人が脱サラをして小売店
を開業しました。一年が経過しましたが、売上げが予想に反して伸び悩んでいます。〈こんなことなら脱サラするべきじゃなかった〉と悔やまれてなりません。
〈ここはもともと立地が良くない〉〈バイトの店員の態度が悪いから売れないのだ〉〈結局、この商売は儲からない。熱心に勧めたあいつが悪い〉と、つい何かの「せい」にしてしまう心がよぎります。その気持ちは、日を追うごとに増すばかりです。嫌々商売を続けるうちに、経営状況はさらに悪化していくのでした。
さて、このように「せい」にしていて、はたして次の一手が生まれるでしょうか。
人は、多かれ少なかれ、他力本願の気持ちはあるものです。状況さえ整えば自社も良くなる、と思いがちです。しかしそれでは、自社の好不調も、周囲次第となってしまいます。
日々刻々と社会情況が変化する中、「タナからぼた餅」ではなく、喜びの仕事を自ら創造していくにはどうすればよいのでしょう。
苦境から脱出する鍵は、「徹底して人を喜ばせることにある」と説いたのは、倫理研究所・丸山竹秋会長(二代目理事長)でした。
「今日はお客さんをどのくらい喜ばせたであろうか。数は少なくなったが、また新たに入る見込みもないが、とにかく現在、いっしょに働いてくれるわが従業員たちを、今日はどのくらい喜ばせたであろうか。こうしたことがらを、徹底的に追及しながら、毎日毎日を働きぬいてゆくことです。そうしておりますと、かならず時がきて、こんどは以前にも増して、はるかに、りっぱな仕事ができるようになるのです」
(『中小企業の突破口』より)
〈あれが悪い〉〈これでは駄目だ〉と人のせいにしたり、ただ悲観しているより、「やると決めた以上はやるのだ」と心を決め、人を喜ばせることをひたすら一所懸命にやる。人の喜びは、必ずわが喜びとなり、今の仕事への喜びを育ててくれるものです。
住宅建築の会社を経営するT氏は、休日になると、必ずといっていいほど地域の清掃に打ち込んでいます。高速道路の真下など、人が来ないような所にも足を運び、ヘルメットと作業着を着て、四時間ほどゴミを拾います。
「人様の見てないところで、いかに人様のために働けるかと思って清掃しています」と語るT氏。清掃で日焼けした顔で、ニッコリと笑います。
T氏の奉仕活動は、傍から見れば、〈なぜそこまで?〉とも思える活動です。しかし、地域のために一身に打ち込んでいるうちに、人の喜びがわが喜びとなって、仕事へのエネルギーを生み出しています。喜びの効果が波及するように、直接名指しで、新規の建築依頼が届くことも多いそうです。
 人生の岐路で迷う時、自らを鼓舞して、人を喜ばせることを実践の目標に掲げていきましょう。その喜びの働きこそ、苦境の中で事態を好転させる、大きな原動力となるはずです。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

6月18日 「かつてない困難は、かつてない発展の基礎となる」

「かつてない困難からは、かつてない確信が生まれ、かつてない
確信からは、かつてない飛躍が生まれる」

私が再建する会社の社長として着任する時、幸之助からいただい
た励ましの言葉です。
苦しい時の支えとして素直に拳拳服膺することで、この言葉通りに
なりました。