『吉田松陰一日一言』

川口雅昭氏編  致知出版
『吉田松陰一日一言』
―魂を鼓舞する感奮語録―

4月11日 「心一杯の事を行ひ尽す」

 一事より二事、三事より百事千事と事々類を推して是れを行ひ、一日より二日、三日百日千日と、日々功を加へて是れを積まば、豈に遂に心を尽すに至らざらんや。宜しく先づ一事より一日より始むべし。 安政3年5月14日「講孟劄記」

【訳】

一つのことより二つ、三つより百、千のことと、一つのことから他のことと押し広めて実行し、一日より二日、三日より百日、千日と努力をして功績を積み上げていけば、どうして、心を尽くすことができるようにならないであろうか。必ずできるようになる。志を立てたならば、まず一つのことから、思いついたその日から始めるべきである。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り越えるか―

4月12日 「運命は変えられる」

「木野君、与えられた運命を願った通りに、切り開いていく
人生の方が、醍醐味があって面白いで」

幸之助は、単に運命のままに生きることをしませんでした。
どんな過酷な運命に出会っても、自分の意志で切り拓いて
いったのです。その切り拓く厳しい過程の中に、生きる歓び
を発見していたのです。

すべては生成発展するという信念が、素晴らしい成果をもた
らしてくれました。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

4月11日 「利益は汗と油の産物」

「君な、利益が出ないのは汗のかき方が足らんのとちがうか」。
幸之助は社会的使命や人間主役の経営を主張すると同時に、
その結果としての利益が出ないのは何らかの問題があると考
えていました。

因縁生起と言いますが、結果には必ず原因と縁があるのです。
社会の要請に応え切れていない、当時の私の努力不足を指摘
し、利益は汗と油の産物だと教えたかったのです。

『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』

木野 親之著
『松下幸之助に学ぶ 指導者の365日』
―この時代をいかに乗り切るか―

4月10日 「資源は無尽蔵」

「資源は無尽蔵と考えた方が、気が楽やで、木野君」
あるものがなくなれば、必ず代替え物が発見されてくるものだと、
幸之助は考えていました。
人の智慧は無尽蔵です。
心が無から有を生むのですから。
だから心を清らかに美しくして、「お客様の心に華を咲かせたい」と、
幸之助は念じて経営をしていました。

父親から「ありがとう」

都内で中学校の校長をしていたY氏は、A中学校への赴任が決まりました。
その学校は荒れていて、まともに授業ができる雰囲気ではありませんでした。不登校の生徒にも、教師がきちんと対応していない状況でした。
山積する問題に、〈大変な学校に赴任してしまった〉と思ったY氏。実は、家庭の中にも問題が生じていたのです。
家族は五人、妻とはほとんど会話がなく、年頃の子供たち三人とも、親子の会話らしい会話はありませんでした。
ある日、倫理を学んでいる知人とばったり出会い、講演会に誘われました。テーマは「よみがえるか家庭」というものでした。
家庭の不和を抱えていたY氏は、講演会に参加しました。参考になることはいくつかありましたが、その中でも、「『ありがとう』の力」という話が印象に残りました。
家に帰ると、妻から「○○さんから電話があった」とつっけんどんに言われました。いつもなら、「うん」や「ああ」と返すところです。Y氏は講演を思い出し、「ありがとう」と返事をしました。
食事の時も、「取り皿をくれるかい?」「はい」「ありがとう」。「お醤油とって」「どうぞ」「ありがとう」と、必ず添えるようにしたY氏。たった一言ですが、この日から夫婦の関係に変化が生じました。少しずつ夫婦の会話が増えてきたのです。
それまでは一方的な言葉の投げかけだったのが、「ありがとう」と受け止めることで、夫婦の心の距離が縮まったのかもしれません。次第に妻の表情が明るくなり、子供たちにも、笑顔が多くなってきました。 
もしY氏が、講演の後、「今日は良い話を聞いたぞ。これから『ありがとう』と言えよ」と家族に押しつけていたら、どうなっていたでしょう。会話どころか、家庭の雰囲気はますます暗く、ギスギスしたものになっていたはずです。
良い話を聞いて、それを実際に実践したところから、家族に変化が生まれました。そして、父親の言葉一つが、家族を大きく変えることに驚いたY氏でした。
Y氏が赴任した中学校の雰囲気も、薄皮をはがすように変化していきました。赴任当時は〈どうしたら子供たちが変わるか〉と考えていたY氏ですが、〈まずわれわれ教師が変わらなければいけない〉と、毎週、職員会議を開くようにしました。また、不登校の生徒の家には、Y氏自ら足を運んで声をかけるようにしました。
ほかの先生も、根気よく生徒の話を聞き、アドバイスを送るようになりました。翌年、三年生全員が進学や就職を決めて、無事卒業式を迎えることができたのです。
言葉の力は存外に大きいものです。また、発する人の立場によって、その影響力は変わります。
特に家庭や職場で上の立場の人が発する言葉には、場を一変させるほどの力があります。プラスの言葉で、家庭や職場を明るくするようにしたいものです。